目次
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- はじめに
- 「やってあげる」が芽を摘む理由
- 【事例1】入浴後の更衣で見えた“待つ支援”の効果
- 【事例2】“やってあげる洗面”から“映して伝える洗面”へ
- 支援のゴールは「誰からでも受けられる状態」
- 次回予告
- 関連リンク
こんにちは。東京空色の708(ナオヤ)です。
福祉の現場では、どうしても「早くしてあげよう」「困らないように手伝おう」という気持ちが先立つことがあります。もちろんその思いはとても尊いものです。けれど、ときにその“優しさ”が、ご本人の「自分でできる力」を奪ってしまうことがあるのです。
「やってあげる」が芽を摘む理由
支援者にとって「手伝ってあげたい」という気持ちは自然な反応です。特に着替えや食事など時間が限られている場面では、つい先回りして動いてしまいがちです。しかしその瞬間、ご本人は「考える時間」と「自分で動き出すチャンス」を失います。支援者が先に動くほど、本人は「やってもらうのが当たり前」を学習し、結果として自立の芽が少しずつ摘まれていきます。
【事例1】入浴後の更衣で見えた“待つ支援”の効果
Before(それまでは)
入浴後の更衣室で、E様はよくタオルをかけたまま立ち尽くしていました。これまでは「動かない=できない」と判断し、職員がシャツを着せ、ズボンを履かせる…という全面介助が当たり前になっていました。
Intervention(介入)
ある日、職員はあえて数秒待つことにしました。E様の視線や体の小さな動きを観察し、次に動こうとしているサインを見逃さないようにしました。そして「次はシャツを着ようね」と短く声をかけるだけにとどめ、手は出さずにその場で見守りました。
After(その後の変化)
するとE様は、自分でタオルを外し、ゆっくりとシャツに腕を通し始めました。数日後にはズボンも自分で引き上げるようになり、着替えの流れを一人で進められる場面が増えていきました。
気づき・学び
- 「できない」のではなく、「考えている時間」が必要だった。
- 数秒待つだけで、ご本人の力は自然に引き出される。
- 介助者の“優しさ”は、時に成長の妨げになる。
【事例2】“やってあげる洗面”から“映して伝える洗面”へ
Before(それまでは)
洗面の場面で、F様は洗面所の前に立つと固まってしまうことがよくありました。職員が「手を洗ってね」「顔を洗いましょう」と声をかけても、なかなか動き出さず、そのままの姿勢で時間が過ぎてしまうのです。これまでは「動かないからやってあげよう」と、職員が蛇口をひねり、タオルを手渡して介助していました。
Intervention(介入)
ある日、職員は声をかけるのではなく、自分が隣で正しい洗面の手順をやって見せることにしました。手を濡らす → 石けんをつける → 泡立てる → 洗う → 流す → 拭く――という一連の流れを、落ち着いて自然に“映すように”行いました。
After(その後の変化)
するとF様は、職員の動きを横目で追いながら、少しずつ自分でも手を伸ばして動作を真似るようになりました。数日後には声掛けを最小限にしても、自分から手を動かし始める姿が見られ、最終的にはほとんど自力で洗面を完了できるようになりました。
気づき・学び
- 「やってあげる」ではなく、「見せて伝える」関わりが有効。
- 本人は“やり方がわからない”だけで、模倣という学びのスタイルを持っていた。
- 支援者の姿勢次第で、ご本人の可能性が大きく広がる。
支援のゴールは「誰からでも支援を受けられる状態」
私たちの支援は、一人の職員が一生をかけて寄り添えるものではありません。だからこそ、「この人じゃないとダメ」という関わり方ではなく、誰からでも安心して支援を受けられる状態をつくることが大切です。「やってあげる」支援よりも、「見守って、待って、映して伝える」支援。これこそが、ご利用者様の未来に続いていく力を残す関わり方だと考えます。
次回予告
第5回:支援の引き算──“あえて何もしない”という選択
ときに支援は「足す」より「引く」ことで本質が見えます。次回は、“何もしない”ことが支援になる瞬間について、一緒に考えてみましょう。
関連リンク
- 🧑💼 採用情報(内部リンク):東京空色 採用ページ
- 📘 参考(外部リンク):厚生労働省|障害福祉サービスについて
ハッシュタグ
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